写真集『倒木 〜屋久島 ときの狭間に立ちて〜』

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この度、長年撮りためていた屋久島の風景写真をもとに「倒木〜屋久島 ときの狭間に立ちて〜」と題した写真集を発行することとなりました。正式発売は8月11日(山の日)。大型書店で販売され、お近くの書店からのご注文も可能です。

初めて屋久島を訪れたのは十年以上も前になります。まだ二十代の駆け出しフォトグラファーだった私は自然風景の撮り方を屋久島で学んだように思います。三十代になって、光の捉え方や被写体の質感を思うように撮れるようになった時、もう何も撮るものがないぞという状況になりました。その頃だったか、雨の降る森の中で倒木に目がとまりました。一見すると苔に覆われた巨石のように感じていたものが実は樹だったということに驚きました。苔や蔦、杉の芽など、さまざまな命に覆われた倒木は生と死の境界線すら曖昧に感じさせます。一度ピントが合うと、森のいたるところに転がる倒木が浮かび上がってきました。私はずっと昔から倒木に囲まれていたのでした。
屋久島に生きる千年以上の樹齢を持つ杉は屋久杉と呼ばれます。屋久杉には豊富な油分が蓄えられていて、腐りにくいのが特徴です。そのため、千年生きた杉は倒れたあとも千年残り続けると言われています。森の中には数千年前に生きた命があり、また数千年後まで生きる命が同時に存在しています。途方もない時間と時間の狭間に立っていると、永遠とは静かなのだなと思わされるのです。

出版名:写真集『倒木 〜屋久島 ときの狭間に立ちて〜』
サイズ:天地 290㎜ 左右290㎜ ハードカバー大型本
ページ数:72ページ
価格:6.600円(税込み価格)+配送料(一律1000円)
出版社:冬青社


*以下、写真集の後書きより抜粋
 空から降ってきた雨は山肌や谷を沿って海に流れ落ちてゆきます。ただそれだけのことで、その間(あいだ)にはたくさんの命が生まれます。例外なく、人間もそこにある多くの命の恩恵を受けて生きてこれたのですから、間に生きる存在の一つに数えられるでしょう。とりわけ私の目をひいたのは、森の中でひっそりと生き続ける巨樹でした。通称「屋久杉」と呼ばれるその樹は、樹齢1000年以上の杉を指します。本州の杉の寿命は五百年ですから、少なくとも倍以上は生きていることになります。中には樹齢三千年を超える杉もあります。森では巨木の残骸も至るところに転がっていて、いつからそこにあるのか正確には誰にもわかりません。
 屋久杉はゆっくりと成長するため木目が細かく、樹齢がある杉ほど木質部に油分が多く蓄えられます。それゆえに倒れた後でも腐りにくく、樹齢と同じ年月をかけて土に還ると言われています。やがて倒木は苔に覆われ、苔に蓄えられた水分を栄養にして新しい命が芽吹き始めます。杉の芽だけではありません。さまざまな樹種や菌類など、数え切れない命が倒木を土台にして成長するのです。命に覆われた倒木は生と死の境界線すら曖昧に感じさせます。
 屋久島の森を歩き、静けさをまとった倒木を眺めていると、私の内にある激しい感情が行き場をなくして消えていくようでした。わき起こる怒りや留まり続ける悲しみといった感情は人の短い寿命からくる気がしてなりません。森の中には数千年前に生きた命があり、また数千年後まで生きる命が同時に存在しています。それらの倒木はときに赤ん坊を抱く祖父母のようにも見えてきます。悠久の中に立っていると、人もまた同じように生死を繰り返してきたのではないかと思えます。大切な命を次世代につなげるとは使い古された表現かもしれません。しかし、この森ではそれがシンプルな答えです。誰もが悠久の狭間に一瞬だけ生きているとするなら、個の存在を繋ぐことこそ生きる意味になり得るのかもしれません。

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